武道の修練度を表す指標として立った姿勢があります。太刀を構えた姿勢、道着を着た姿勢を見れば、その人の修練度が見て取れます。境涯や品格というものも何となく感じるものであるのです。すくっと天を突いている姿勢で、なおかつ浮ついたところがない地についた姿勢。一度気を感じれば万境に変化できる自由さを持つ姿勢。そんな姿は武道人として憧れを禁じえません。この姿勢を考えてみましょう。
1、正中線の確立
頭頂を天につるすイメージを持ちます。頭のてっぺんに糸に引かれて上に引っ張られる感じです。これを浮身といいます。
この浮身と同時に自分の尾骨から重りで下に引かれた感じ。これを沈身といいます。これを同時に行います。膝は少しゆるく緩めます。上と下に力が引かれ体の中が真空になった感じがします。
2、丹田の確立
上下に引かれ真空になった感じの場所これが丹田です。この自由性を持った真空状態は真空なるがゆえに正気が集まりやすくなります。この正気の集合体をコントロールすることが武道の基本であり真髄です。丹田は自由性を持つがゆえに移動することが出来るのです。丹田はバランス的に居やすい場所があります。上は目と目の間などです。古来寸田とか上丹田とか呼ばれています。眼力に変化させる場所です。中丹田と呼ばれる乳頭間の奥は動きの中では頻繁に使います。いわゆる臍下丹田といわれる下丹田も言うまでもありません。足丹田いわゆる足心、足の裏も使います。
3、気の移動
頭の先から足の先までこの正気の移動が出来るようになると姿勢が整います。見た目に姿勢が立ち凛とします。美しくなります。感じたところに気が通るようになると、技として活きてきます。太刀の切っ先に気が通る。手の指先に気が宿るという状態です。これを邪魔するのは肉体的力です。これは気の伝達を減衰します。たとえばご飯を食べる時に、腕の力を入れてお箸を持つ人はいません。箸の先端が自由に動いて物をつかめるのです。
4、しつけ
気を通し、対象の一点。たとえば太刀の切っ先、握られた指の一点に気を移動するトレーニングを行います。これが稽古です。正しい姿勢で正しい技は繰り返し行い、自分の摩擦要因を消して、スムースな伝導体を作り出していくのです。型稽古にはこういう意味があるのです。
少し、専門的になりました。正しい姿勢は重力ある世界の原則です。繰り返し稽古していきましょう。
11月5日より12日まで日本武道代表団の一員としてモスクワに行ってきました。昨年、安倍首相とプーチン大統領との日露首脳会談で合意された「2014年日露武道交流年」の記念事業の中核事業としてのロシアでの武道交流です。
団長に高村正彦自民党副総裁、副団長に柔道の山下泰裕さん、現代武道9道、古武道3流、総勢75名の大軍勢になりました。各流派そうそうたるメンバーが参加をしました。私たち大東流合気柔術は、長谷川すみ枝教授代理・天野鎮夫葛飾支部長・石井勇一本部指導員と私の4名で参加をしました。
スポーツ省への表敬訪問に始まり、スポーツ大臣との懇談。タス通信での記者会見、ロシア政府からの歓迎晩さん会。モスクワ国立体育スポーツ大学での武道セミナーや演武会。ルジニキ・オリンピックアリーナでの大演武大会そしてワークショップ。5000人を超えるロシアの観衆の中、プーチン大統領の列席も得ました。また独自に大東流合気柔術のオープンセミナーを開き、ロシアの武道愛好家に大東流合気柔術を指導してきました。次の日はモスクワ支部の稽古会も開催しました。
ほとんど休む暇もない強行日程でしたが、得るものは大変多くありました。一つは国を代表するということの重みです。もう一つは流派を代表するということの重みです。公式行事や演武大会は順当に終了しました。問題はその後のワークショップの時に起こりました。当初20人程度の体験会という説明を受けていましたが、会場の5000人の観客がなだれ込んできたのです。小さな幼児の体験者から、真剣を差している武士風(道着を着て侍のような恰好)の男や力自慢の男、他の武道をやっていて試したい男。それらが一気になだれ込んできたのです。それらを一気に裁くのは至難の業でした。傷つけてはいけない。負けてもいけない。いかに「相抜ける」か、その位置取りが非常に勉強になりました。
オープンセミナー及び稽古会では初めて参加する人に、技を理解させ覚えさせる難しさもともかく4時間ぶっ通しのセミナーの構成の難しさを知りました。特に言葉が通じない中での指導は、なかなか滑稽なものがあります。
いずれにしても無事任務を終え帰国できたのは、長谷川・天野・石井諸兄並びにロシアのイブゲニー・スタス・ミーシャ・アンドレー並びにわざわざ来てくれたアレックス・パスカルに熱い謝意を述べたい。 感謝。
ロシア連邦派遣日本武道代表団として11月5日~12日モスクワに行ってまいります。
日本代表としての演武及びセミナーを行います。
尚、稽古は通常通り行われます。
10月25日、26日と鹿島神宮の大神様(武神 武甕槌大神)の御前で演武をしてきました。私はこの大会が大好きです。凛とした大神様の御前で演武をするということはもちろんですが、武徳殿での演武、そして本殿前での演武と2度行うことにより、他流の先生方の演武も2度見ることが出来るからです。他流の多くの名人の先生の演武を見るチャンスはそう多くありません。尚且つ、質問や疑問点などは直接先生方にお聞きすることが出来るのです。
卜傳流の技法の中に、一刀流と共通するものがたくさんあること発見いたしました。一刀流の他流勝ちの中に、「卜伝が一太刀」の型が残っています。虚を取り入り身に入る、また折身の技法等、共通するものが多々ありました。伝承過程で富田流の影響を受けた影響かもしれません。
関口流の米原宗家は御年92歳。座位からの抜刀を見させていただくたびに、長年培われた芸術を感じざるを得ません。そのお姿は将に未来の理想でもあります。お若い先生の中で特に私の目を引いたのは天道流薙刀術の木村友里先生です。風車や水車の見事なこと。
ご幼少のころから基本を修練したものだけが出来る安定感と技のさえがありました。笹森道場の禮樂堂での直元流の薙刀稽古が思い出されます。
他流の先生の演武の素晴らしさを文章にしたらきりがありません。学びの多い大会でした。技の整合理合、間、呼吸、気合。各流派の秘奥が詰まっていました。(公財)日本武道館並びに日本古武道協会の皆様に厚く感謝申し上げます。
大神様の御前は厳しくも温かく楽しいものでした。
第59回大東流合気柔術演武大会で当道場の味岡功磨君が大活躍、
銀賞をいただきました。
10月26鹿島神宮奉納日本古武道交流演武大会が開催されます。
近藤昌之副本部長以下大東流合気柔術の演武を行います